マージンコールからの移行措置
FXは、あらかじめ利息や配当が決まっている預金商品とは違い、証拠金(保証金)を積んでそれを元手に利ざやを狙う、『投資商品』です。したがって、大きな利益を得られるチャンスがある反面、運用方法によっては大きなリスクを抱えることにもなります。
外国為替の値動きは気まぐれそのものです。小さな値動きで推移していた相場が、突如として予想以上に大きな値動きに変わったりします。思惑と反対のトレンドに向かった場合は、巨額の損失を被ることになります。
積み上げてきた証拠金(保証金)が目減りしたり、取引に必要な証拠金を食いちぎってしまうこともあります。この場合、取引業者は、投資家に対して損失が一定の基準を上回ったという旨の警告、『マージンコール』を発します。
巨額の損失を食い止めるための安全装置
ある程度の損失が出た場合、一度歯止めをかけないと、いずれ取り返しのつかない巨額の損失を被る可能性がありますから、マージンコールで警告を発した後、投資家自身の対応がない場合は、外為業者側で強制的に決済して、ポジションを閉じてしまいます。 これを、『ロスカット・ルール』といいます。取引業者によっては、含み損が発生しているポジションが全て反対売買によって決済されます。ポジションが閉じられれば取引がいったん終了しますから、決済されたポジションに関しては、それ以上に損失が膨らむことはありません。
ロスカット・ルールの基準
損失を強制決済されるロスカット・ルールは、何か大きな損をしたような気にもなりますが、預け入れした証拠金(保証金)以上に損失が膨らむことはありませんから、リスク管理をする上では必要なルールといえます。
ロスカット(強制決済)される基準は、外為業者によって一律ではありません。
ロスカットのレベルを 20%、30%、40%、50%などと、投資家自身が設定できる外為業者もあります。
【証拠金率の計算例】
たとえば、最低取引保証金が10万円、証拠金率が20%を下回った時点で強制ロスカットされる条件で、為替相場 1ドル=100円の時に1万ドルの買いポジションを保有したとします。
為替が1ドル=99円になった時点での損失と証拠金率は、
損失額 = 1円 × 10,000ドル = 10,000円
証拠金 = 100,000円 - 10,000円 = 90,000円
証拠金率= 90,000円 ÷ 100,000円 × 100(%)= 90%
その後、91円99銭までドル安が進行しました。(円高)
損失額 = 7円1銭 × 10,000ドル = 70,100円
証拠金 = 90,000円 - 70,100円 = 19,900円
証拠金率= 19,900円 ÷ 100,000円 × 100(%)= 19.9%
証拠金率が20%を割り、ロスカットが発動されます。
何度も触れたように、為替相場が予想と反した動をして、思惑どおりの利益を得られないことは珍しくありません。マージンコールやロスカットは、投資の読みが外れて損失が最悪の状態を招かないためのルールでもあります。
こうした状態を招かないためには、あらかじめ損失を限定しておく『損切り』の重要性についても知っておく必要があります。